便秘って放っておくと、将来の出世にひびく?

子どもの慢性的な便秘を、「継続的に便秘がない状態」にするには、長い年月が必要とされています。

外来で1, 2度薬を渡され、一旦便秘が良くなっても、数週間後に便秘がぶり返すこともあります。そして、生活習慣や食事の変更をして、薬を飲んだとしても、便秘が継続的に改善するには、月単位、あるいは年単位の時間が必要なることもあります。

今回は、慢性的な便秘を放っておいた場合、一体どうなるのか?についてお話しします。

  1. 3歳までの便秘の定義と症状は?
  2. 便の性状(形)や色をチェックしよう!お腹もチェック。
  3. 3歳までの便秘の原因って何があるの?
  4. トイレットトレーニング
  5. 便秘って放っておくと、将来の出世にひびく?
  6. 便秘の治療(生活習慣の改善)
  7. 便秘の治療(ゴッドハンド編)
  8. 便秘の治療(使う薬の種類)

便秘を放置した場合の統計

まず、3つの信頼できる欧米の雑誌からの報告をお話しします。
簡単にまとめると、「便秘と分かったら、治す行動に早めに移らないと、大人になっても便秘のまま」だということです。

①4歳までに便秘になったお子さんは、治療を行なっても、40%が大人になっても便秘である。

②5歳以上の便秘のお子さんは、その25%が大人になっても便秘である。

③なるべく早い段階で便秘と診断し、適切な評価と治療をすれば、便秘は克服できるかもしれない。

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・4 歳以下で便秘と診断されたお子さんの40% 以上が、浣腸や下剤などの薬の治療や、食物繊維の摂取による食事の改善にもかかわらず、小学校に入っても、便秘がある状態である。
 特に、最初に便秘で病院に行った年齢が2歳以上だと、便秘の状態が続く可能性が高い。(Loening-Baucke V. Constipation in early childhood: patient characteristics, treatment, and longterm follow up. Gut 1993;34:1400-1404)

・5歳以上で病院を受診した便秘のお子さんの25%程度が、大人になっても便秘のままである。そのお子さんの中でも、便秘になった年齢が高かったり、便秘になってから病院に行くまでの期間が長いと、便秘が治りにくいということが分かった。(Bongers ME, van Wijk MP, Reitsma JB, et al. Long-term prognosis for childhood constipation:clinical outcomes in adulthood. Pediatrics 2010;126:e156-162)

・早い時期から適切な評価と治療が行われたら、大人への便秘の移行が防げるかもしれない。(Chitkara DK, Talley NJ, Locke GR 3rd, et al. Medical presentation of constipation from childhood to early adulthood:a population-based cohort study. Clin Gastroenterol Hepatol 2007;5:1059-1064)

便秘を放置することで起こること

  1. 長期間便秘が続くことで、生活の質(QOL)が落ちます。
  2. 慢性的に切れ痔で、お尻が痛い状態になる可能性があります。
  3. 子どもの頃の場合、便秘が続くことで、おしっこの感染症(尿路感染症)が増加することが報告されています。
  4. そして、高齢者であれば、憩室症(腸に一部が袋のように飛び出ているポケットのようなもの)が増加する可能性があり、そこに食べカスやばい菌が貯まって、炎症を起こしたり(憩室炎)、その腸の壁は薄くなっているので、出血しやすくなります(憩室出血)。

うんちが出ないと、出世できない?
(マズローの欲求段階説)

便秘で陥ることの中でも、生活の質(QOL)が落ちることが一番の問題と思います。

マズローの欲求段階説とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものです。

ピラミッドの上にあることを実現するには、ピラミッドの下にある土台がしっかりしていないと、実現が難しいということです。

大人で例えるなら、ピラミッドの上から順に、
自己実現欲求:「豪邸にすみたい」を叶えるためには、
出世欲など承認欲求:「他者から認められた高い地位の仕事について、お金を稼ぐ」ことが必要となります。
帰属欲求や社会的欲求:そして、出世を得るためには、「会社で上司や部下からの信頼を集める必要(社会的欲求)」が必要となり、「仕事場や家庭で、自分が落ち着ける居場所(帰属欲求)」が必要なります。
安全欲求:さらに、「自分や家族が病気もなく、安全な住居と生活に心配いらない状態(安全欲求)」でないと、上の3つは満たされません。
生理的欲求:そして最後に、「寝る、食う、うんちをする」など人間が生きて行く上で、絶対に必要なことが満たされなければ、自己実現に影響がでるという説です。

よく言われることですが、家庭のことがなおざりになると、仕事に影響が出て、出世しないと言われますが、この説からも説明できると思います。

ピラミッドの根底にある「うんちを気持ちよく出す」という行為ができなければ、歯車が狂い、将来的な生活の質に影響を及ぼす可能性があるのです。

今日のまとめ

慢性的な便秘はすぐ簡単には治りませんが、そのまま放置しておくと、大人になっても便秘のままで、切れ痔で大変だし、生理的欲求が満たされず、生活の質が落ちて、出世に響く可能性があるということでした。
現実は、ひどい便秘でなければ、関係ないとは思いますが。。

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