皮下脂肪減少、筋肉量減少の身体診察 -乳幼児・小児の栄養評価・身体診察-

Nutrition-focused physical examination (NFPE)は重要なデータを教えてくれます。
そもそも、大人と違い、小児では皮下脂肪や筋肉量が少なく、体重当たりの必要なエネルギーを多く必要とします。

NFPEでは視診と触診を主に用います。また乳幼児では、脂肪減少と筋肉減少の違いを身体診察で見極めることが難しいので、一緒に評価します。

Head-to-Toe exam 診察は頭からつま先まで入念に! 

皮下脂肪減少のサイン:骨が見えている部位(bony area)、痩せこけたほお(hollow cheek)、平坦な・あるいはたるんだお尻(flat or baggy bucks)

筋肉量減少のサイン:突き出ている骨や痩せこけた筋肉

※常に左右差を気にしながらみる必要がある!

頭と顔の診察

  眼の周囲
(正面から観察)

頬の周囲
(正面から観察)

〔目と耳の間の〕こめかみ
(正面と側面から観察)
診察のテクニック 軽く頬骨の上を触る 軽く頬を触る 軽くこめかみを触る
正常 やや膨らんでいる 丸く膨らんでいる 平坦で、筋肉が分かる
mild-moderate 
軽症〜中等度の栄養不足
少し暗い色darkで、
やや痩けている
平坦で、肌に弾力がない 少し窪んでいる
Severe
重度の栄養不足
黒い色で窪んでおり、
たるんで垂れている
痩せこけて、窪んでいる 深く落ち窪んでいる

上肢の診察

  上腕三頭筋エリア
(肘を上に90度曲げて観察)
鎖骨エリア
(なるべく姿勢を正して
立たせて、座らせて)
三角筋エリア
(腕は横にして
姿勢を正して)
診察のテクニック

軽く上腕三頭筋をつまむ

 
鎖骨のラインを確認し、
追う 
正面から背面の三角筋の形を確認する 
正常  腕は丸く、十分につまめる 鎖骨は確認でき、
突き出ていない 
丸々としている 
mild-moderate 
軽症〜中等度の栄養不足
 いくらかつまめる 鎖骨は少し突き出ている  肩峰突起が出ている
Severe
重度の栄養不足 
指でつまめる深さがほとんどない 鎖骨は突き出している 肩と腕が四角くなっている 

背面上肢の診察

  肩甲骨と背骨エリア
診察のテクニック

乳児は立たしてもらう

正常 骨は突き出ていない
mild-moderate 
軽症〜中等度の栄養不足
肩甲骨周囲が少し窪んでいる
少し骨が出ている
Severe
重度の栄養不足 
 著名に背骨周囲が凹んでいる
肩甲骨が明らかに突出している

胸部・腰部の診察

  胸部(肋骨、腋下中線エリア) 腰部エリア
診察のテクニック 立たせて行う 立たせて行う
正常 胸はふっくらしており、肋骨は見えていない 腸骨稜はほとんど見えない
mild-moderate 
軽症〜中等度の栄養不足
肋骨は少し見ていて、
肋骨周囲が少し落ち窪んでいる
腸骨稜が少し見えている
Severe
重度の栄養不足 
肋骨が明らかに見えていて、
各肋骨の間がほぼ見えない
腸骨稜が明らかに見えている

下肢の筋肉

  太腿前面 膝周囲 ふくらはぎ後面
診察のテクニック 患者に座って足を持ち上げてもらう
座るのが無理であれば、
寝て膝を曲げてもらう
乳児の場合は、
親の膝に座ってもらう
正常 丸くて、くぼみがない 筋肉が出ていて、
膝骨は突き出ていない
球状によく発達している
mild-moderate 
軽症〜中等度の栄養不足
少し痩けている 膝骨が突出している 少ししかない
Severe
重度の栄養不足 
かなり窪んでいる 膝骨が突出し、
膝周囲の筋肉がほぼない
ほとんど筋肉がない

下肢脂肪の診察(乳幼児のみ)

  臀部の診察
正常 太って丸々している
mild-moderate 
軽症〜中等度の栄養不足
少し彎曲しており、丸くない
Severe
重度の栄養不足 
皮膚のシワが見えて、脂肪がほとんどない

Mid–Upper Arm Circumference (MUAC)を使う!

MUACは腹水や浮腫に影響されず、また筋疾患や遺伝疾患で評価が難しい患者にも使用できる有用なツールです。
次回、詳細に説明します。

お母さん、お父さんに有用な情報を提供していきます。よろしければ、フォローください。