人間を磨く~人間関係が好転する「こころの技法」(田坂広志 著)
新しく次男が出生し、育休の傍で長男と過ごす時間が多い。コロナウイルスの影響下で、妻の出産1か月半前から自宅でテレワークをしている。妻が切迫早産の可能性があったため、心労と実労働を減らすためにもとても良い時間ではあった。しかし、思うように仕事は進まず、そして長男の悪戯にイライタすることも重なった。
こうした時に、アンガーマネージメントやマインドフルネスの座学で学んだ手法をと思っても、なかなか思うように活かせない。家族皆が外に出てはいけない鬱憤と出産への不安があり(他者不安)、妻も長男も上手くケアできない自分への葛藤(自己嫌悪)もあった。人間力が高ければうまく対処できたのであろう。。
この本はそんな時に手にとった本です。
この本の視点は、「非」や「欠点」のない人間を目指すことではなく、「非」や「欠点」を持ちながらも上手く周りの人とやっていく力を培うことを目指している。
ただ、静かに見つめること
「忘己利他」、「我欲」を完全に捨てるということは、他の小さなエゴを生み出す可能性がある。
虚栄心、嫉妬心、功名心が現れた時は、ただ静かに見つめること。
この本には、嫉妬心が現れた時に、否定するのでもなく、肯定するのでもなく、「ああ、自分の中で嫉妬心が現れたな」と静かに見つめること。。と記載されている。
これは亜ンガーマネージメントと同じ理屈であるが、これを実践することはなかなか難しい。。
人間関係が好転する「7つの心の技法」
1. 心の中で自分の非を認める
人は、非があり、欠点があり、未熟であるから、周りの人の心が離れていくのではない。人は、自分の非を認めず、欠点を認めず、自分には非が無い、欠点が無いと思い込むとき、周りの人の心は離れていく。
仕事や生活において、人間関係がおかしくなる時は、必ずと言っていいほど、互いに「相手に非がある」「自分には非はない」と思っている。
自分の欠点や非を素直に自覚し、またその欠点や非を、周りの人間に対して率直に認めることが大事。
2. 自分から声をかけ、目を合わせる
特に喧嘩している時なども難しい。
「自分に非の無い出来事に対しても、自分にも非があると思って、真摯に受け止める心の姿勢」が、このことに繋がる。
これは難しいが、例えば自分の息子がイスに登って落ちた時に、私は息子に謝ってしまう。「ごめんね。痛かったね。ちゃんと見てなくてごめんね」と。
3. 心の中の小さな「エゴ」を見つめる
河合隼雄先生との話の中で、「人間、本当に自信が無いと、謙虚になれないんですよ」という格言があった。
真の謙虚さとは、まさに、「自分の非や欠点や未熟さを、素直に認められる」ということであり、その非や欠点や未熟さを、一つ一つ克服しながら成長していこうという姿勢である。
もう一つ、格言が出てきた。「人間、自分に本当の強さがなければ、感謝ができないんですよ」
では、どうすれば本当の強さを身につけられるのか。
・人間、謙虚さの修行を続けていれば、自然に「本当の自信」が身についてくる。
・人間、感謝の修行を続けていると、自然に「本当の強さ」が身についてくる。
4. その相手を好きになろうと思う
これはなかなか難しい。どのコミュニケーションテクニックでも述べられているが。。
では、「相手を好きになろう」と思ったとして、どうすれば、その「好きになれない人」を、意識的に好きになることができるのか?
本作では、「嫌いな相手を好きになる」ための簡単な方法は無いが、そのための参考になる、「人間を見つめる視点」は、幾つかある。それを、ここでは「五つの視点」として述べてられている。
1. 本来、「欠点」は存在しない、存在するのはその人間の『個性』だけである
2. 嫌いな人は自分に似ている
他者への嫌悪の感情は、しばしば、自己嫌悪の投影である。
3. 「共感」とは、相手の姿が、自分の姿のように思えること
4. 相手の心に「正対する」だけで、関係はよくなる
相手に正対するとは、「相手を一人の人間として敬意を持って接する」こと
5. 相手を好きになろうとすることは、最高の贈り物である
「孤独」と「寂しさ」がゆえに、この人生において、我々は、誰かから愛されたい、誰かから好かれたいと願って、生きている。この欠点も未熟さも抱えた自分を、そのまま受け入れてくれる人との出会いを願って、生きている。もし、我々が、そのことを理解し、その深い眼差しにおいて、相手を見つめるならば、その人を、すぐには好きになれなくとも、「この人を好きになろう」という思いが浮かんでくるだろう。
5. 言葉の怖さを知り、言葉の力を活かす
言葉の使い方を誤ると、嫌いな人をますます嫌いになっていく。
言葉の力を活かすと、逆に、嫌いな人でも、好きになっていく。
誰かを感情的に批判したとき、自身の心の中で、「三つの内省」を行うべきである。
1. 誰かを感情的に批判したとき、自分の心の奥深くに、「自分を許せない思い」や「自己嫌悪の感情」が生まれていることに気がつく。
2. 相手を感情的に批判した自分を正当化したくなる「小さなエゴ」の動きを見つめる。
3. 相手の非や欠点を更に探して、自分を更に正当化しようとする「小さなエゴ」の動きに気づく。
6. 別れても心の関係を絶たない
「愛情」とは関係を絶たぬことである。「愛情」の反意語は、「憎悪」ではなく、「無関心」である。
あなたを去った者、卒業した者から、「あなたにもう一度会いたい」と言ってもらえるか。。
7. その出会いの意味を深く考える
人生における、人との出会いは、すべて、自分という人間の成長のために、与えられた出会いだと考える。
この章で述べられている「卒業しない試験は追いかけてくる」という概念はとても勉強になります。
自分が今まで避けてきた課題というのは、いつになっても何年経っても似たような課題が、自分のいく先々で出現するとう意味です。
その時に、「これは自分が解決していない、解決しなければならない課題である」と解釈できるかどうかが大事だと筆者は述べている。