海外の大学院(MPH/MSc)を目指す上で考えておくべきこと

Noteに同じ記載をしました。

海外でのMPH/MScのキャリアに関して

私は日本で臨床研究系のPhDを取得したのち、現在はロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)のDistance Learning (online) MScに在籍しています。MPHや疫学のMScの興味のある方は、SDOH分野や医療政策に興味があるのかと推測します。あなたが、もし海外居住に家族の心配がなく、そして費用的に問題ないのであれば、住みたい/将来仕事に就きたい海外現地での大学院に通われることをお勧めします。現地で、あなた自身が実際に弱者になった時、人種を意識した時、他国の医療システムで困ったことなど、その土地で五感で感じることが、将来的にとても重要だと思います。

私が検討した大学院

英語のみで学べる北米、日本でも知名度の高い以下を考えました。
英国 LSHTM、Imperial College
カナダ トロント大学 Dalla Lana School of Public Health (MPH)(現地で600万円以上かかる見込み)
アメリカ ハーバード、ボストン大学、ジョンズ・ホプキンス大学
(当時、学費と居住費で1000万円近くはかかると思われました)今はボストン大学は比較的安価にオンラインで学べますね。

英国 LSHTM(Distance Learning)を選んだ理由

1. Distance Learningの歴史が長いこと
2. 知名度と学費(知名度の高い大学院の中では最も安価。私が入学時は、学費がトータルで250~270万円だったと思います)
3. 日本やカナダと似た医療システムを持つ国であること
4. 将来的なWorking ビザ発行の可能性
5. 日本とのコミュニティのつながり
 長崎大学との連携などもあり、LSHTMには日本人在学生や卒業生コミュニティが比較的大きいと感じました。

私は大きな行動を取る際に以下のことを考えます。

1. 5~10年後の着地点を考える
大きな行動をする際は、「(大学院を終えた後)次の5〜10年後に、どこで、何をしていたいか」をイメージすることをお勧めします。同時に、Plan BやCも常に考えておきます。
海外で大学院卒業後、もしその土地で続けて働く可能性があるならばWorkingビザを取得する必要があります。現地の有名大学院卒業後に、もしその土地で働きたいと考えたときに、ほぼ確実にworkingビザが出るのは英国だと思います。カナダやアメリカは必ずしもそうではありません。他の欧州の国は知りません。

2. ビザや就職の現実面
• 将来、英国で働く可能性があるなら、英国の有名大学で修士号を取得しておくとGraduate routeや、医療者であればSkilled worker routeなどのworkingビザ取得がしやすくなる場合があります。
• もし将来、北米(米国やカナダ)で研究者や勤務医として力を発揮したい場合、英語が主言語の国で学位を取っておくことが有利になる可能性があります。英国がベターだとは思います。
• もし将来、アフリカの貧困国で働きたいのであれば、フランス語を習得した方がいいので、フランスの大学院で勉強するのもありかと思います。この場合、将来カナダでの就職にも有利となります。

3. 「将来どこで・何をしたいか」による最適解
• たとえば、「日本のデータベースを使って日本人の疾患を詳しく研究したい」のであれば、東大や京大など日本の大学院に進学して、国内のコミュニティを築くこと、データベースをその後も使用できる環境を構築することの方が、海外でMPHを取得するよりもメリットが大きいかもしれません。
• 一方で、海外で将来働きたいなら、その国の有名大学院で修士を取ったほうがworkingビザや就職には有利になると思います。

大学院によって学べる内容の特徴

トロント大学 Dalla Lana School of Public Health
カナダはAI研究が盛んで、トロント大学は特に機械学習などの研究が活発です。もしAIや機械学習を深く学びたいなら魅力的な選択肢になります(ただし学費は高め)。

英国 LSHTM
発展途上国からの留学生も多く、アフリカなどの途上国の社会的決定要因(SDOH)に触れる機会があります。しかし、本当に貧困地域での研究や活動を行いたいなら、その現地での実務経験が必要になると思います(その場合、フランス語が必要になるケースもあるかと思います)。

大学院以外での学習も可能

MPH/MScの修士号があれば、特に海外では就職に有利になると思いますし、communityは世界中に広がると思います。さらに、他国で働く際のビザや永住権の取得に有利になります。

一方で、修士レベルの“机上の知識のみ“であれば、高額の大学院に通わずに、他のオンラインコースや書籍、各種リソースでも知識を得ることは可能だと思います。しかし、世界のpublic schoolで学ぶ問題点を机上のみならず、実際に五感を通して感じることはとても重要です。

実際に1-2年間生活をし、危険な路地裏を自身の目で見ること、そこで不快な匂いを感じて麻薬や不衛生の蔓延を感じること、医療システムが日本ほどアクセスが良くなく困ること、人種を意識する場面に出くわすこと、一方で非常に親切な人に出会うこと、移民で来た人々のエネルギーが違うこと、baby first/kids firstの場面に出くわすこと、これらを1−2年間居住して、経験することは、その後の人生や医療や研究の道筋にとても有利だと思います。

今回はMPH/MScに通う具体的な情報ではありませんが、海外留学の決断の参考になりますと幸いです。

お母さん、お父さんに有用な情報を提供していきます。よろしければ、フォローください。

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