3歳までの便秘の原因って何があるの?
ヨメは、我が子が便秘なのは、「食べ物が原因かな?」「私も便秘気味なのが原因なのかな??」と、困っておりました。便秘のお子さんはとても多いので、ヨメと同じように困っているお母さん、お父さんは多いと思います。
今回は、0−3歳時の便秘の原因についてお話しします。
- 3歳までの便秘の定義と症状は?
- 便の性状(形)や色をチェックしよう!お腹もチェック。
- 3歳までの便秘の原因って何があるの?
- トイレットトレーニング
- 便秘って放っておくと、将来の出世にひびく?
- 便秘の治療(生活習慣の改善)
- 便秘の治療(ゴッドハンド編)
- 便秘の治療(使う薬の種類)
子どもって便秘になりやすいの?
便秘は多くのお子さんに起こります。文献を集めて解析した海外からの報告(システマチック・レビュー)によると、約30%のお子さんが便秘となります。
そして、はっきりとした結論は出ていませんが、家族内で便秘の方がいると、他の兄弟やお子さんも便秘となる傾向(家族内集積の傾向)があるそうです。(Ostwani W, et al. Familial clustering of habitual constipation:a prospective study in children from West Virginia. JPGN 2010;50:287-289)
便秘っていつなりやすいの?
① 乳児(1歳未満)で、母乳から人工乳(粉ミルク)へ移る時や、離乳食を開始する時期
② 2−4歳で、トイレットトレーニングを開始した時期(便秘になる時期として最も多い)
③ 小学校に入った開始時期や、学校でうんちをするのが嫌になる時期
上記、3つの時期が有名です。
今回は、①と②の時期のお子さんの原因について、お話ししたいと思います。
なお、③の小学校でのうんち問題は、今対策を進められています。
”小児科医パパ”が小学生の時は、トイレが暗くて、古くて、汚くて、冷たくて、嫌でした。そして低学年の頃は、うんちに行くと、友達からドアを叩かれたり、「うんちマン」などと言われる子もいて、そりゃうんちに行くことは嫌だなって思います。
便秘の原因の考え方
原因は、①はっきりとした原因が分かりにくい(過敏性腸症候群を含む)機能性便秘症、
②はっきりとした原因が分かる便秘症、に分けられます。
①の機能性便秘症は、環境や食事の調整や薬を使用することで、数か月から数年で治る便秘です。
②の原因が分かる便秘に関して、ただ漠然と経過をみていても、治らないかもしれません。逆に治療すれば、すっきり便秘が治るかもしれません。
小児科医の多くは、まず「原因が分かる便秘はないか?」と考えて、身体を診察したり、検査をします。そして、可能性として機能性便秘症を考えれば、生活習慣の指導、子どもがうんちをしやすい環境作りの指導、薬の調整などを行います。数か月経っても、改善がみられなければ、大きな病院でしか調べられない「原因が分かる便秘」を調べてもらうために、紹介することになります。
では、「原因が分かる便秘」とはどんなものがあるでしょうか?
原因が分かる便秘には、どんな病気がある?検査は?
外科的疾患(小児外科の判断が必要な病気)
① ヒルシュスプルング病・類縁疾患(腸を動かす神経がなかったり、数が少なかったり)
② 肛門狭窄(肛門が狭い)、低位鎖肛など肛門の位置異常など
③ 脊髄の腫瘍など
④ お腹の中の腫瘍(卵巣腫瘍)など
→身体診察で目安をつけて、注腸造影検査(造影剤を腸に入れて、腸の形を調べる)、腸の動きを調べる検査、腸の神経を調べる生検検査、お腹のMRI検査、などで調べます。
これらの検査は、大きな病院でしかできません。
内科的疾患(代表的な病気)
①牛乳不耐症、 牛乳アレルギー(便秘よくなれと思って与えている牛乳やヨーグルトが便秘の原因の可能性もある)
② 薬の副反応(抗ヒスタミン薬の入っているかぜ薬など)
③ 甲状腺の病気や電解質異常(カルシウムの検査値が高かったりなど)
④ 染色体異常や寝たきりのお子さん
⑤ 自閉症やADHDのお子さん、などです。
便秘が良くなるように、お子さんに牛乳やヨーグルトを毎日与えているお母さんに、その乳製品が原因かもしれませんよ、というのは辛いですが。。。
このことは、日本小児栄養消化器学会の便秘ガイドラインによくまとめられています。
(「慢性機能性便秘症に牛乳アレルギーが関与するか?」)
機能性便秘症ってどんなもの?
これは、検査をしてもなかなか原因の分からない便秘です。
乳幼児期は慢性機能性便秘症と診断することが多いですが、思春期ごろからは過敏性腸症候群と名前が移り変わります。
原因としては、生活習慣や食事内容の他に、学校での環境や家庭内での関係、友達との関係、学校の成績、進学や就職の不安など、悩んでいることが原因となってくる可能性があります。そして、お母さん、お父さんのとても強い不安や心配をお子さんが感じ取って便秘になる可能性もあります。
お子さんの年齢が大きくなればナイーブな事柄が含まれることもあるので、学校での様子や家での様子を、お子さんとお母さん・お父さんとを分けて、場所を移して、別々に問診することがあります。
”小児科医パパ”が経験したお子さんでは、学校のテスト前や、空手大会の前に便秘がひどくお子さんがいました。それらが終わると急に便秘は良くなりました。また、学校でいじめられており、学校に行くとなれば、便秘と下痢を繰り返すお子さんもいました。
生活習慣や学校環境、友達や家族との仲、学校の成績などへの特効薬(魔法のような薬)はありません。
もちろん便秘を改善させる薬はありますし、臨床心理士さんとお話しをすることで、便秘がよくなるお子さんもいました。これは別の機会でお話しします。
便秘が原因となる食事内容に関して、食物繊維が足りていない可能性、水分が足りていない可能性、乳製品が悪さをしている可能性、そして今流行りの腸内細菌叢が良くない可能性などがあります。この点に関しては、便秘の治療(生活習慣の改善)でお話しします。
心と身体をよくする(脳腸相関と便秘の関係)
「腸脳相関」といって、お腹の動きや腸内細菌叢(お腹の中の微生物)は、身体の不安や楽しいことに反応するため(腸の働きは自律神経に左右される)、脳(心)と身体を健康にすることが重要となります。
”小児科医パパ”は、中学生の頃は朝の電車に乗ると、よく下痢を起こしていました。おそらく過敏性腸症候群だったのかと思います。そして、朝ごはんを食べなければ、下痢をしないという法則を見つけ、朝ごはんを抜くようになってしまいました。この時は仕方なかったと思うのですが、その後結婚するまでほとんど朝ごはんは食べない生活習慣となってしまい、今は後悔しています。
その分、今は朝ごはんを食べるようになって、太ってしまったという別の後悔もありますが・・・。
一病息災
そんな、”小児科医パパ”は、一病息災という言葉が大好きです。何か一つ病気(便秘)があれば、健康になるための行動を考えたり、生活習慣を変えようと努力します。そのことで、別の大きな病気を防げる可能性があるからです。
機能性便秘は良くなるまで、数ヶ月から数年かかってしまいます。
”小児科医パパ”は、そんな「一病息災」のお話をして、お子さんやお母さんたちと一緒に便秘治療にあたっています。
さて次回からは、「トイレットトレーニングの方法」「便秘をほっておくとどうなるか?」、そして「便秘の治療はどうすれば良いのか?」についてお話しします。